インスタンス(いんすたんす/instance)
インスタンス」は、オンラインゲームの実装の一形態。
オンラインゲームの特徴は複数のプレイヤーで「一つの世界を共有する」ことであるが、「インスタンス」はこれを否定し、世界の「部分的なコピー」を作ることで様々な利便性を得ようとするものである。

非常に大雑把な説明だが、インスタンスを導入する事で、「同時性」が失われる替わりに、「負荷軽減」、「デザインの自由度の向上」といったが得られる。

ぴんとこなければ、インスタンスは、マーケット(リテイナー街)をイメージしてみると良いかもしれない。
マーケットは同じ景色のストリートがいくつも並列に存在し、それそれにいるPC,NPCは異なる。
厳密には各ストリートが「別の場所」という設定であり、「コピー」ではないが、「インスタンスとして実装する事で全リテイナーが一箇所に集めた場合の負荷やユーザー体験上の問題を解決したもの」と考えて良いだろう。

同時性が重要な状況と重要でない状況

2人の冒険者が待ち合わせをして、2人とも同じ場所に到着したら、よほど目が悪くなければ2人は会うことができるだろう。
「同時性が失われる」というのは、そういった前提が失われるということである。
インスタンスが採用されたゲームでは、同じ時、同じ場所にいるはずの2人が互いに、見えず、聞こえず、触れないといったことが起こり得る。
つまり、「待ち合わせ」という状況では同時性が問題となる。

一方で、「狩り」の場面では、敵と自分、あるいは自分のパーティメンバーだけがいればいい。むしろその方が都合がいい状況もありうる。
つまり、「狩り」の場面では、同時性が問題となりにくい。

ゲームの仕組みにインスタンスを採用する場合、「同時性が問題となりにくい場所や状況」が選ばれる。

利便性のために捨てられた同時性の損失は、必要があれば対策が採られる。
例えば、街にインスタンスを取り入れたゲームは実際にあり、インスタンスというものを理解していないと実際に「待ち合わせ」で問題が発生するが、そういったゲームでは「/sayは届かないが/tellは届く」、「インスタンス間の移動が明示的に行なえるコマンドを用意する」といった対策が採られており、理解していれば大きな問題とはならない。

クエストのインスタンス

FFXIVではさまざまなクエストで「インスタンス」が利用されている。
例えば、各国のオープニングの最初の戦闘はインスタンスで行なわれる仕様となっているので、FFXIVのプレイヤーであれば誰もが一度はインスタンスという言葉を目にし、体験していることだろう(忘れているかどうかはともかくとして)。

インスタンスの中にいる間は、いわば「世界の部分コピー」が作られ、FFXIVではその範囲が画面上のレーダーに赤っぽい円が描かれて示される。これを出ると、本来の世界に戻ることになる。
また、十二跡調査会のような、エリアが丸ごとインスタンスとなっていたり、さらにその中でインスタンスに入ったりするケースもある。

インスタンスへの入り方はクエストによって異なるが、クエストを受けた状態で特定の位置へ移動したり、NPCに話し掛けるものが多いようだ。

インスタンスの数

インスタンスは世界の部分コピーであるが、どういったときに、何のコピーが、いくつ作られ、作り置かれ、破棄されるかはゲームのつくりによって異なる。

クエストのインスタンスは、オープニング最初の戦闘であれば1プレイヤーに1インスタンスが用意されているものと思われる。で、なければ、戦闘開始したとたん、ほかのプレイヤーが敵を倒してしまうかも知れない。

一方、オープニングの戦闘後、冒険者ギルドへ行くまでの部分(リムサ・ロミンサであればフェリー・ドックのシーン)では他のプレイヤーを目にした者が多いのではないだろうか。
このケースでは、1人1インスタンスではなく、他のプレイヤーとインスタンスが共有されていることになる。
以後のクエストでも、例えば十二跡調査会はインスタンスとなっているようで、ここでもタイミングが合えばほかのプレイヤーを見かける機会がある。
各クエストにおいて、明確な意図があって他のプレイヤーと同じインスタンスを使うようになっているのかは不明だが、「同時性が問題となりにくい場所や状況」であれば同じインスタンスを使うというポリシーとなっているようだ。
同じクエストに何百人も同時アクセスした場合にインスタンスは1つが共有されるのか、複数となるのか、複数の場合パーティメンバーは優先的に共通のインスタンスを割り当てられるのかは不明である。

インスタンスダンジョン

インスタンスダンジョンは「同時性が問題となりにくい場所や状況」として、
  • パーティでのダンジョン攻略中は、パーティメンバーと敵だけいれば「いい」

という想定を行なったデザインであると考えられる。
各パーティに一つ、ダンジョンを丸ごとコピーすることで、

  • ダンジョン探索中に他の冒険者と出会って意気投合して……
  • パーティの大ピンチにどこからともなく助っ人が現れ……

といった、それはそれで魅力のある可能性を捨てる替わりに、

  • 一度倒したら二度と沸かないような敵や、敵が沸く仕組みを明示しやすく、攻略感が得られる
  • ダンジョンの状況が単純化されるので「ザコと7回ばかり戦ってダンジョンの雰囲気がわかったころに、ザコ戦で学習した作戦の応用が利く中ボス戦、倒すと秘密の扉が現れて……」といった通常の国産RPG的なユーザー体験が作りやすい
  • カウントダウンでダンジョンが崩落する!といった(FFでありがちだがオンラインでは無茶な)演出も可能になる。
  • 通信量が激減する
  • 横取り、取り合い、MPKといった問題が避けられる

といったメリットが得られるものと考えられる。

インスタンスという言葉

ゲームでいう「インスタンス」の語源は、ソフトウェア用語であると考えられる(参考:→Wikipedia:インスタンス)。
文脈によって意味は異なってくるが、「ソフトウェアの文脈で、似たようなものをたくさん作る仕組みがある、という前提において、その仕組みで実際に作られるものを指してインスタンスと呼ぶ」という説明で、だいたい当てはまるだろう。
実例、実体、実装などといった訳語が充てられることもあるが、日本であれば「インスタンス」と言った方が誤解が少ないだろう。

一般的な用法ではないが、広義にはFFXIVの「ワールド」もインスタンスの一種と言えるかも知れない。

関連項目

インスタンスレイド】【FF11:インスタンス
本記事に対して情報がある方は下記コメント機能をご利用ください。