星芒祭/雪人の儀(せいぼうさいせつじんのぎ)
公式の読み物として旧the Lodestoneで紹介されていた読み物、「週刊レイヴン」の一つ。
旧the Lodestoneは閉鎖したため、現在は読むことが出来ない。
旧the Lodestoneは閉鎖したため、現在は読むことが出来ない。
星芒祭/雪人の儀 (2011/12/14) 編
黒衣森の木々の1本、そのまた無数に空いたウロの中の1穴から、鋭いクチバシで一片の真実をつつき出す「週刊レイヴン」主筆のグッドフェローです。「星芒祭」の季節を迎える中、ハーストミルで準備が進む異国の伝統儀式について、速報をお届けしましょう。
ギラバニアの伝統儀式
黒衣森北部にて、寒波の訪れが遅れている。
月の衛星「ダラガブ」が血の色に染まってからというもの、「第七霊災」は間近であるとの不吉な噂が絶えないだけに、地元ハーストミルの住民たちも、この異常な気候に不安を隠せない様子だ。
寒くなければ、過ごしやすいはずと思われる御仁もおられるだろうが、それは素人考えというもの。園芸師ギルド・筆頭園芸師のフフチャ女史によれば、この季節の作物は、夜間の寒さで糖度を増し、美味しくなるのだという。
さらに、このままでは落ちたばかりの果実が、春を待たずに芽吹いてしまい、遅れて到来した寒波で全滅しかねない、というのだから深刻だ。
この事態に対し、ある一人のアラミゴ出身者が立ち上がった。ハーストミルに身を寄せている難民、ワルドマル氏が、自らの故郷であるギラバニア地方の伝統儀式「雪人の儀」を執り行おうと申し出たのである。
話によると「雪人の儀」とは、かの地で「星芒祭」の一環として行われるものらしい。初雪を使って雪像を作り、寒さ厳しい季節の安全と、「寒さと雪がもたらす恵み」を招いてくれるようにと、祈願するものだという。
この申し出に対し、碩老樹瞑想窟の幻術士たちは、好意的な反応を示した。総合商社「黒兎堂」に協力を要請し、とんとん拍子で開催の運びとなったのである。
何事にも精霊の許可を求め、対応の遅さには定評のある幻術士たちにしては、いやに早い決断ではないか。
本誌の取材に、ある下級幻術士が匿名を条件に、儀式開催の裏に隠れた意図を話してくれた。どうやら幻術士たちは、件の儀式に効果があるとは、それほど期待していないらしい。終末論的な噂が広まる状況で、少しでも住民の気晴らしになれば……という考えのようだ。
また、これを機にアラミゴ流入民と、地元民の相互理解が進めばとの思惑もあるという。イクサル族やガレマール帝国の脅威が強まる中、森に住む者の団結が求められているためだ。
こうした裏の思惑はさておき、森で初めて行われる異国の伝統儀式……果たして、本当に「寒さと雪がもたらす恵み」を招くことはできるのだろうか?
オリバー・グッドフェロー